お知らせ

10月1日「文学Ⅶ 小説の言葉を読む」のワークショップを開催しました

2018年10月11日

10月1日(月)に、文学分野のワークショップ「小説の言葉を読む」を開催しました。ファシリテーターは、中村ともえ先生(静岡大学教育学領域准教授)です。静岡県浜松市に在住する小説家、吉田知子の泉鏡花文学賞作品、『箱の夫』をテキストに、「小説の言葉」について考えようというものです。
まず、この短編小説を黙読する所からスタート。その後グループで、好悪の感触、気になった部分や疑問などの読後感を話し合いました。
続いて、中村先生による趣旨説明。小説の言葉と、メールや手紙や新聞の言葉との違い、また、詩や戯曲の言葉との違いに焦点をあてることが予告されました。そしてそのことを、「言葉によって、登場人物が空間と時間をそなえた、世界の中にいる状態を立ち上げること」、と説明されました。
次いで、「小説の言葉を可視化する」ワーク。その1として、受講者に2枚のワークシートが配布されました。1枚は空間・場所について考えるためのもの、もう1枚は時間について考えるためのものです。主要な登場人物3人が、いつどこで何をして過ごしたかなど、グループごとワークシートに記入。家の間取りや庭の様子、外出先や言及されているだけの場所についても、想像をたくましくして「地図」を作成。流れる時間も一方向ではないことが浮き彫りになりました。
ワークその2として、文章に書かれていることと、書かれていないことについて考え、「夫」の外見や行動や嗜好、そして「夫婦関係」や「姑との関係」などについて推理を進めました。さらに、「夫」を表す言葉が、話の展開に応じて変化するのですが、それが登場人物の関係性の変化と連動していることに注意が促されました。穏やかに物語は始まり、次第に違和感が増してきて、後半に生じる2回の状況の変化によって、加速度的に異様さが増してきます。しかし、その異様ささえも、読者はリアルに想像できることを確認することができました。
最後に、言語学における「シニフィアン」と「シニフィエ」という概念が紹介され、小説における言語とは、必ずしも、言葉で意味内容を表すだけでは十分ではなく、意味内容に還元できないものが含まれる、ということを共有してワークショップは終了。ここで経験したことは、映画、演劇、絵画など幅広い芸術ジャンルに接し、あるいは紹介する際に大いに参考になるのではないでしょうか。