活動報告

11月27日「福祉系・表現Ⅳ」のワークショップを開催しました

2018年12月12日

11月27日「福祉系・表現Ⅳ」のワークショップを開催しました。
ファシリテーターは、11月1日に行った「福祉系・表現Ⅲ」に続いて、京都造形芸術大学名誉教授の水野哲雄氏さんです。

今回も静岡大学教育学部附属特別支援学校と連携し、同校の校外活動として位置づけました。ワークショップで使う小石などの材料は、水野さんとサポート役の成実憲一さんが、前日のうちに準備してくださいました。
受講者(14名)の集合時刻は9時30分。皆で会場設営をした後、水野さんよりこのワークショップで大切にしたい3つの「チ」、「キモチ・カタチ・イノチ」について説明がありました。10:00頃に特別支援学校の生徒(18名)と先生(8名)が大学に到着。そして、参加者(受講者と生徒)が6つのグループに分かれ、ワークショップは始まりました。

導入:「小石とあそぶ;ならべる〜積む」
参加者は、小石(前日に洗浄済み)の山から、1人8個の石を選び席に戻ります。次に、折り紙が配布されました。折り紙は造形活動を展開する「場」とのこと。最初のワークは、「4つの石の上に、残りの4つを乗せられますか?」。シンプルな行為ですが、石が組み合わされることで面白い形が出現。次に、「3つの石の上に5つを・・・」、さらに、「2つの石の上に6つを・・・」。だんだん難しくなりますが、そのことも楽しそう。あちらこちらで歓声が上がります。ついに「1つの石の上に、残りの7つを・・・」。大人でも難しいのですが、何人かの生徒が達成。
展開1:小石に手足が生えたら
1人あたり3本の園芸用結束ワイヤーが配布されました。
「針金3本があります。それを小石に巻きつけ、手足を作って、立たせてみてください」、動物なら足が4本、昆虫なら6本。鳥なら2本。ということで、参加者は石を胴体に見立てて挑戦。上手く立つと、小石が生き物に見えてくるから不思議です。
展開2:伸張するアルミ線
「アルミ線で遊びます」ということで、参加者には太さ0.9mm、長さ1mのアルミ線が配られました。
水野さんは皆の前でアルミ線をボール状に丸め、「これは種」と説明。そして針金の端をつまんで、それを植物の「芽」に見立て、ぐんぐん成長してゆくように伸ばしてゆきました。次に参加者が試行。「どこまで高く伸びるかやってみましょう」ということで、皆は、アルミ線にキモチを通わせます。
展開3:バランスと増殖するカタチ
3本のU字形の結束線で、人のカタチを作るワーク。まずは、水野さん自ら実演。1本目で頭と胴体が作られ、2本目は腕、3本目は足に。また、関節を作ってゆくことで、動きのある人のカタチになりました。次いで参加者が、それぞれの「人のカタチ」を作り始めました。最後に、バランスに気をつけ「人」を立たせます。いろいろなポーズの「人」ができあがりました。
U字形の結束線を次々と結びつける立体造形、「増殖するカタチ」をやって見せてくださいました。みるみるうちに、不思議なボリュームのあるカタチが現れてきました。
まとめ:グループごとに話し合いを行い、最後に、教室の後ろに集まって、水野さんを中心に中学部の生徒と本事業の受講者が集まって記念撮影をし、ワークショップは終了。

午後は会場を教室に移して、受講者による「振り返り」を行いました。
まず水野さんから、今日のワークショップで見られた生徒の現れについて感想をいただき、成実さんからも感想と水野さんとの関わりについて紹介いただきました。
次いで、活動の記録写真をプロジェクターで投影しながら、水野さんからそれぞれのワークについて解説をいただきました。「小石を積む・並べるとは、造形性が表れる原初の行為」、「生徒と受講者が同じ目線で関われた」、「場・空間・物と物の関係、見えないものを感じる」などの言葉が印象的でした。
質疑応答では、多くの質問に丁寧に答えてくださいました。大切なこととして、「参加者には、できるだけリラックスしてもらうようにしている」、「ワークショップの基本はライブということ、相手がどう反応するかわからない。そのことを大切にしている」等々。
事前に準備した木の枝などの材料は、時間の関係で使うことはできませんでしたが、身近にある様々な物が、豊かな造形活動を導く材料となることも共有できたのではないでしょうか。
特別支援学校の中学部生徒と一緒に、大人も子どもも造形活動の根源的な楽しさに触れる貴重な時間を過ごすことができました。

11月19日「広告×ジェンダー」のワークショップを開催しました

2018年11月28日

11月19日、「あざれあ(静岡県男女共同参画センター、指定管理者:あざれあ交流会議)」を会場に、「広告×ジェンダー」のワークショップを行いました。今回は、あざれあとの共同企画という位置づけでの実施です。

講師は、株式会社ポーラの宣伝部長 渡邉和子さん、「POLAリクルートフォーラム」のキャンペーンを担当されているクリエイティブディレクターの原野守弘さん(株式会社もり)、コピーライターの山根哲也さん(株式会社ライトパブリック)、加えてこの映像を取り上げて議論の場をつくりたいと提案してくださった、あざれあ交流会議理事の滝和子さんの4名です。
前半は、4名の講師陣によるパネルディスカッション、後半はそれを受けてのワークショップの2部構成です。

パネルディスカッションは、ポーラが制作したリクルートフォーラム用の映像を、その企画意図、反響、社会と社内の変化、ジェンダーの世界的な歴史・動き等を重ねながら意見交換をしました。(以下、3本が課題になったポーラの映像)

後半のワークショップでは、主にアートマネジメントの現場に潜んでいるジェンダー問題を注意深く振りかえるという課題に取り組みました。
そもそも才能や実力が重視されるアートの現場では、女性も男性も分け隔てない、という傾向が他の現場よりも強いかもしれません。一方で、だからこそ逆に一般を対象におこなうワークショップや催事などでは、その視点が忘れられがちになります。

今回は、いつものワークショップよりも受講者が相当混乱したようにも見受けられます(受講者がSNSで対話するシーンが散見されました)。何よりもこのワークショップ全体が目指す、答えがひとつに決まっていない課題に向き合うことで、「カンバセーション(会話)」ではなく「ダイアローグ(対話、議論)」が生まれる、そんな機会となったことは大きな成果だったとおもいます。

11月5日「美術ⅩⅢ」のワークショップを開催しました

2018年11月20日

 11月5日(月)に、美術分野のワークショップ「Wondering: Childhood Memoir」を開催しました。ファシリテーターは、フィリピンのアーティストで大学教員のノエル・エル・ファロルさんです。ファロルさんは、美術展「めぐるりアート静岡2018」の招待作家として、市内の中勘助文学記念館で作品を展示しています。作品は中勘助の代表作『銀の匙』を踏まえ、人々にとっての記憶・時間・記録をテーマにしています。
 ワークショップは主に英語で行われました。
 内容は『銀の匙』のように、受講者が自らの幼年期を回想し、日々の暮らしのなかで経験した、心に残る出来事を絵に表し、言葉に記すというものです。

 導入として、静岡大学の白井さんによる講師紹介があり、そこではファロルさんの美術家としての幅広い活動が紹介されました。続いて、ファロルさんがワークショップの内容を紹介し、白井さんから内容を記した日本語のプリントが配布されました。
 活動1(絵を描く)
 まず受講者は目を閉じて、幼年期を回想するところからスタート。
 そして下描き用のA4コピー用紙が配布されました。すぐに描き始める人、なかなか始めない人など、動き出しは人によって様々。次いで、本番用としてA3のやや厚めの紙が配布されました。二つに折って、見開きの左側が絵、右側が言葉のページ。まずは思い浮かんだ、幼年期の出来事を絵で表します。
 活動2(物語を記す)
 次いで、右側のページに、その場面について言葉を添えていきました。活動1と活動2は連動しているので、ほぼ同時に行うケースが多かったように思います。
 絵を描き文章を書き終えた人から、題名をつけて作品を提出。事務局では、スキャナーを使って画像としてPCに取り込み、またグループごと人数分だけカラーコピーをとっていきました。

 昼食を挟んで、午後はそれぞれの「回想」が発表されました。時間の関係で、グループごと各1名、全部で5名のプレゼンが行われました。通訳は主に白井さんが務めました。
 仕上げは、製本の時間。グループごとに、カラーコピーをクリップで綴じて冊子にまとめ、その後、他グループの冊子を見て回るなどの交流をし、和やかな時間が流れました。受講者のオリジナルの作品は、ファロルさんに提供され、それは現在開催中の中勘助文学記念館にて展示されることになります。展覧会終了後はフィリピンに持ち帰られ、しっかりと製本され、受講者の書いた文章がファロルさんが勤務する大学の日本語コースの学生によって英語に翻訳される予定です。
 本ワークショップによって、参加者は自分自身の『銀の匙』に気づくとともに、それを形にし、広く他者と分かち合うことができるという気づきを得ることができたように思います。



10月15日「食文化Ⅱ」のワークショップを開催しました

2018年10月23日

10月15日、ミカコーポレーション(沼津市・代表:野中美香)さんを講師にお招きして、食のワークショップを実施しました。今回は食の中でも、日本食の根幹を成す出汁について、いろはのいから学びました。全体は、講義とワークショップの二部構成です。

講義
出汁とはそもそもなにか。うま味とはどういったものか。うま味のトライアングル(グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸)。味覚とは(味覚の役割=生命の維持にも大きく関係する)。うま味調味料の留意点(濃度と味の強さについて)。水と出汁の関係について(軟水と硬水)。出汁の効能(減塩効果、維持的唾液分泌誘導、食物の消化吸収を促す、食欲を向上させる、新陳代謝のアップ、ストレス緩和、丈夫な骨をつくる、血圧の上昇を抑える)等々、これまで出汁について、部分的には知っていたこと、分かっていると思っていたが実は曖昧だったり、曖昧のまま放っておいたことを学び直しました。

ワークショップ
*出汁に使うかつお節の見方や削り方を学び、まずは自らかつお節削り器を使って削りに挑戦してみました。なかなか思ったように削れません。想像していたよりも難しい。昭和30年代生まれの方は、まだまだ家庭中で削り器を使うシーンがあったのではないでしょうか。

*出汁の取り方(一番出汁):水を鍋に入れて昆布を浸します。季節によって、昆布種類によって違いはあるのですが、夏は20分程度、冬は1時間程度を目安にします。その後火にかけ、鍋の内側にふつふつと泡がついてきたら(60〜70℃)速やかに昆布を引き上げます。決して煮すぎてはいけません。煮出すとよりうま味が増すと勘違いしないようにしてください。75〜90℃になったら、かつお節削りを入れ、火を止めて1分程度してから濾してください。ここでも長く煮込みすぎないように注意しましょう。

と言うことで、受講者の中からも、「(自宅では)昆布は、おでんの具のように時間を掛けてずっと煮出していました。その方がおいしい出汁が出ると勘違いしていました」という声がちらほら聞こえてきました。

2013年に日本食がユネスコ無形文化遺産に指定されてしばらく経ちます。また、最近、丁寧に暮らす、といった言葉をあちこちで頻繁に目にします。それには、毎日の暮らしを支える食、なかでも出汁をきちんと取ってみることからはじめてみるのはいかがでしょうか。
アートマネージャーにもそういった余裕が欲しいですね。何よりもそんな眼を持たないと、見失うもの、見えてこない世界が必ずあるはずです。
食文化は人間の生命を支える特色ある地域資源。今一度、丁寧に、地域の食文化を見直してみましょう。

10月1日・10月15日「音楽Ⅵ」のワークショップを開催しました

2018年10月22日

ギタリストで作曲家の丸研さんこと丸山研二郎さんを講師にお迎えして、10月1日と15日の2回シリーズで音楽Ⅵのワークショップを実施しました。
テーマは、「次代に残したい静岡の歌」としました。

丸研さんは昨年2017年8月に、1936年(昭和11年)静岡県教育会から発行された唱歌を音源化した『静岡懸郷土唱歌』(T2オーディオ,2017.8)を仲間たちとリリースされました。

今回、静岡大学のワークショップでは、その大仕事に感化され、未来へ残したい静岡の歌をみんなで作詞し、それに丸研さんに曲をつけてもらうという構成をとりました。

1回目は、丸研さんの講義(そもそも唱歌とは、唱歌と童謡の関係など)を受けつつ、全員参加によるパーカッションで身体と会場の空気をほぐし、『鉄道唱歌』の替え歌で連歌のように言葉とリズムを紡いだりしました。

さて、気持ちが一気に高まると、グループワークで課題に取り組みました。丸研さんから、唱歌の歌詞の特徴、作詞の具体的な方法、作曲の構成などにアドバイスをもらいながら、静岡に関連するキーワードやフレーズを出していき、歌詞を仕上げていきました。
この日の最後にグループごとに、歌詞のプレゼンテーションをして、丸研さんから評価を頂きました。

2回目を開催するにあたり、丸研さんが受講者の創った詩に曲をつけるという大仕事に向かってくれました。

さて、2回目です。気持ちも新に、大学から公共施設アイセル21(静岡市葵区)の音楽室に場を移してのワークショップです。

まず、グループごとに丸研さんがつけてくれた曲を聴きます。みんな、自分の作詞の大化けぶりに欣喜雀躍、大喜びです。そのまま、丸研さんのギターでリハーサル、そうして録音という流れです。

そうして、ここに記念すべき5つの静岡の曲が誕生したことを皆様にもご報告しておきます。この場ではタイトルだけ挙げておきますが、唱歌というよりも、演歌っぽいもの、フォークソングっぽいものなどが多少ありましたが(*^_^*)、新たな方法と視点で静岡の資源を掘り起こす最高の機会となりました。

この原稿を書きながら、改めて曲を聴いているのですが、どれもみな良い曲だな〜(しみじみ)

【受講者による新静岡唱歌】
*「しずおかのひと」 (作詞:白鳥、本間、高岡  作曲:丸山研二郎)
*「だもんで だいすき しずおかじん」(作詞:高橋、深野、牧野  作曲:丸山研二郎) 
*「めぐる風 〜いとしき街と季節〜」(作詞:大塚、藤井、阿部、白井  作曲:丸山研二郎) 
*「この街」(作詞:高島、板倉、山本  作曲:丸山研二郎) 
*「はるかな三保」(作詞:柴田、飯塚、伊東  作曲:丸山研二郎)

10月9日「美術ⅩⅡ 鳥の巣作ろう 〜鳥の巣が教えてくれること〜」のワークショップを開催しました

2018年10月17日

10月9日(火)に、絵本作家、鳥の巣研究家の鈴木まもるさんをファシリテーターに迎え、美術分野のワークショップ「鳥の巣作ろう 〜鳥の巣が教えてくれること〜」を開催しました。鈴木さんは、1986年より伊豆の下田に在住し絵本の制作と、鳥の巣の研究を続けておられます。内容は、大きく3部構成で、最初に絵本についての話、次に鳥の巣についての話、最後に鳥の巣を作るワークショップと、その振り返りとなりました。
絵本についての話:10:45〜11:55
絵本作家とは何か、絵本とは何かについて、ホワイトボードに流れるように絵を描きながら分かりやすく説明してくださいました。また、ご自身の子ども時代の話や普段の暮らしから、同調圧力の強い日本社会についてユーモラスに批評。
鳥の巣についての話:12:45〜14:00
持参した旅行鞄の中から、次々と本物の鳥の巣を取りだして受講者に紹介。ご自身がどのように鳥の巣と出会い、またなぜ鳥の巣を研究するようになったのか、その経緯を説明。Nest → Nestling → Nestle。Nestleは「気持ちいい」という意味。鳥の巣とは家ではなく、卵が孵って雛が巣立ったら、それでおしまい。いかに卵と雛の命を守るかというもの。ここでも、ホワイトボードに絵を描きながら、分かりやすく説明してくださいました。
鳥の巣を作るワークショップ:14:10〜16:00(制作と発表)
鈴木さんが用意してくださったたくさんの小枝、事務局が用意した紙粘土や布など、また各自持参した様々な材料を使って、思い思いの鳥の巣を作りました。実際に作ってみると、鳥の偉大さがよく分かります。鈴木さんは、机を回りながら適宜助言をしてくださいました。そして受講者が一人ずつ、自分の鳥の巣を発表しワークショップを終了。
振り返り:16:20〜17:00
スライドを使って、珍しい鳥の巣を紹介。世界で一番大きな巣を作る、南アフリカのシャカイハタオリと、オーストラリアとニューギニアに生息するニワシドリを例に挙げ、鳥の生き方や鳥の巣から学んだことを説明してくださいました。ご自身の仕事、絵本作家とは、小さい子どもが育つためのもの。鳥の巣も同じ、という言葉が印象的でした。
最後に、17:00〜17:30まで質疑応答の時間が設けられ、何人もの受講者からの活発な質問に優しい言葉で含蓄のある返答をしていただき、ワークショップ「鳥の巣作ろう」を終えました。


10月1日「文学Ⅶ 小説の言葉を読む」のワークショップを開催しました

2018年10月11日

10月1日(月)に、文学分野のワークショップ「小説の言葉を読む」を開催しました。ファシリテーターは、中村ともえ先生(静岡大学教育学領域准教授)です。静岡県浜松市に在住する小説家、吉田知子の泉鏡花文学賞作品、『箱の夫』をテキストに、「小説の言葉」について考えようというものです。
まず、この短編小説を黙読する所からスタート。その後グループで、好悪の感触、気になった部分や疑問などの読後感を話し合いました。
続いて、中村先生による趣旨説明。小説の言葉と、メールや手紙や新聞の言葉との違い、また、詩や戯曲の言葉との違いに焦点をあてることが予告されました。そしてそのことを、「言葉によって、登場人物が空間と時間をそなえた、世界の中にいる状態を立ち上げること」、と説明されました。
次いで、「小説の言葉を可視化する」ワーク。その1として、受講者に2枚のワークシートが配布されました。1枚は空間・場所について考えるためのもの、もう1枚は時間について考えるためのものです。主要な登場人物3人が、いつどこで何をして過ごしたかなど、グループごとワークシートに記入。家の間取りや庭の様子、外出先や言及されているだけの場所についても、想像をたくましくして「地図」を作成。流れる時間も一方向ではないことが浮き彫りになりました。
ワークその2として、文章に書かれていることと、書かれていないことについて考え、「夫」の外見や行動や嗜好、そして「夫婦関係」や「姑との関係」などについて推理を進めました。さらに、「夫」を表す言葉が、話の展開に応じて変化するのですが、それが登場人物の関係性の変化と連動していることに注意が促されました。穏やかに物語は始まり、次第に違和感が増してきて、後半に生じる2回の状況の変化によって、加速度的に異様さが増してきます。しかし、その異様ささえも、読者はリアルに想像できることを確認することができました。
最後に、言語学における「シニフィアン」と「シニフィエ」という概念が紹介され、小説における言語とは、必ずしも、言葉で意味内容を表すだけでは十分ではなく、意味内容に還元できないものが含まれる、ということを共有してワークショップは終了。ここで経験したことは、映画、演劇、絵画など幅広い芸術ジャンルに接し、あるいは紹介する際に大いに参考になるのではないでしょうか。

9月25日「伝統工芸」のワークショップを開催しました

2018年10月3日

9月25日、駿河凧の継承者・後藤光さん(5代目・絵師)を講師にお招きし、ワークショップを開催しました。

まず、駿河凧の発祥(今川義元の先勝の祝いだと言われている)や「凧八」の歴史、特徴などについて基本的なことを学びました。受講者のみなさんも静岡に住んでいながら、知らないことが多かったのではないでしょうか。

さあ、ワークショップです。受講者は、講師の用意した線描きの絵(武者絵、歌舞伎絵)に凧の形状をした和紙を重ね下絵を描き入れていきます。太筆を使ってトレスする、ただこれだけのことが思うようにすすまず、絵師の技法の高さを思い知らされます。
続いて、その下絵に4本の竹ひごをつけていきます。糊の量(表に描かれた武者絵などの顔にあたる部分には糊を付けないなどの注意が必要)、左右のバランスもさることながら、節の位置を左右同じするなどのポイントがあります。自然素材を使うということは、ただパーツを組み立てればいいというのではなく、その行為一つひとつに意味があることを知ります。感覚だけで作業を行うと凧が思うように揚がらないのです。

続いて、描いた絵に、色をつけていきます。想像と違っていたのは、凧に竹ひごを取り付けたあとに色をつけていくという順のことでした。色づけは、薄い色からつけていくこと。色は混ぜない、手早く塗る、ぼかしのときには平筆の半分に絵の具、半分に水をつけるなどの独自の手法があります。
仕上げの揚げ糸(これにもいくつかのポイントがあります)をつけて、さあ、完成。ここまでで、延べ6時間。今回は凧揚げをしている時間はつくれませんでしたが、さて、うまく揚がるでしょうか(笑)。時間があれば、受講者みんなで揚げてみたいと思っています。

ところで、凧というと、すでに昔のあそびであり、伝統的な技法という枠の中に閉じ込められたものというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。果たしてそうでしょうか。例えば、2018年3月にはパレスチナ自治区ガザ地区南部のハンユニスで、東日本大震災から7年の節目に合わせて、日本との連帯を示す凧揚げ大会が開かれたことをご存知でしょうか。あるいは、遠藤一郎というアーティストは、参加者とともに凧に未来を描いて揚げるプロジェクト「未来龍大空凧」を各地で開催しているのをご存知でしょうか。これらは、伝統工芸の枠を超えての取り組みの一例です。

今回は、徹底して伝統工芸の型をなぞり、その手法について学びました。アートマネージャーには、伝統工芸の技に敬意を払いつつも、つねに新しい時代の空気を取り入れていくミッションがあります。「型があるから型破り。型がなければ、型なし。」ということなのです。

8月27日「演劇Ⅳ」のワークショップを開催しました

2018年10月3日

8月27日は映画監督で俳優の鈴木卓爾先生(京都造形芸術大学)をお招きし、演劇のワークショップを開催しました。場所は静岡市内を流れる安倍川の上流にある「鈴木邸」(先生のご実家ではありません(笑))。講師の先生から会議室ではない「懐かしさを感じる場所」で行いましょう、というご提案を受け、探した場所でした。ワークショップの趣旨を考慮して開催場所を選択するということもとても大事なことです。

最初のワークは3人ずつのグループに分かれて「他己紹介」を演じる、というものでした。AさんがBさんをCさんに、BさんがCさんをAさんに、CさんがAさんをBさんに紹介する、という状況を他のグループの人の前で演じます。状況はそれぞれのグループで考え、場合によっては作り話にしても良いけれどドラマティックな展開にする必要はなく「ただ演じる」「つまらないことをつまらなくやる」という条件の中でワークが行われ、様々な表現が生まれました。

鈴木先生からは各グループにコメントを頂きました。その中で「演じる」ということは、日常よりずっと相手のことを見つめる、聞くことになるので「日常の中では起きないことをやっている官能的なプロセスである」。また「演じる」ということは人間が古代から継続して行っている営みで、「置き換え」や「再現」を「見ている人がいる」「誰が見ているか考える」ことが演技の本質なのではないか、という先生のご指摘は大変興味深いものでした。

午後に行われたワークでは、演技を映像に撮って鑑賞しました。事前に受講者には「”記憶に残っている一言”を思い出してくること」という宿題が出されており、その「一言」と「状況」を紙に書いて提出。ランダムに混ぜた状態から、グループごとに3つの言葉と状況をくじ引きのように引き、それらを使ってストーリーを考えます。さらにそれを他のグループの皆さんの前で演じ、それを鈴木先生がカメラに納めます。カメラリハ1回、3分程度のワンカットで行われました。

全員で映像を見た後に、自分の”記憶に残っている一言”が、他の人の口から、全く異なる分脈、状況で言われるのを見聞きした経験に対して、鈴木先生を交えて白熱した意見交換が行われました。その中で「自分の思い出が取られてしまったような感覚を得た」「同じ言葉がポジティブにもネガティブにも取れるニュアンスの違いに驚いた」などの感想が寄せられ、受講者は他の人の大事な言葉を受け取った責任の重さを感じながらワークに参加していたことがわかりました。

鈴木先生はあるグループの演技を「美しく着飾ったセリフにならないように、透明な言葉のまま、余計なことをしないで、自分のものにしないで話していた」と評価され、俳優はそのように「台詞が身体を通過していくメディアであり、言葉を置いていく、置き換える作業をしている」職業だと解説されました。また演じるということは「置き換える行為がつながってきた」ものであり、「日常の中で本来のものが少しすり抜ける知恵」のようなものなのではないか、という指摘をされました。簡単に答えが見出せるものではないと前置きされつつも、「演じる」ということについて熱く語られる先生と議論できたことは、とても貴重な経験になりました。

8月20日「予算書・見積書」のワークショップを開催しました

2018年10月2日

8月20日は神戸アートヴィレッジセンター、事業チーフの近藤のぞみさんを向かえて「予算書・見積書」と題した実務系のワークショップを開催しました。

近藤さんは(公財)神戸市民文化振興財団の職員として永く芸術系の事業運営に関わって来られ、助成金等の書類作りに長けたプロ。端的で実現可能な説得力のある数字を記すテクニックを、ワークを通じて教えてくださいました。

まず体験したのは「ワールドカフェ」という手法でした。最初に「理想の文化事業とは?」というテーマでグループごとに議論します。次にグループのホスト役の人はテーブルに残り、他の人たちは他のグループへ出張してそこのグループのアイデアを聴き、また自分のグループに戻って自分が聞いてきた企画を報告し合いながら、さらに自分たちのアイデアもブラッシュアップさせるものでした。これはこれまでのワークショップでは取り入れられなかった方法で、受講者にとって新鮮だったと思います。

次に近藤さんによる「なぜ予算書をつくるのか?」という内容の講義を聴き、グループワークで事例として「室内楽のコンサートをする場合」に想定される収入・支出の項目を皆で考え、発表し合います。このワークを通じて、コツとして「見えないところまで想像する」(交通費など)、「細かいところまで想像する」(税金、著作権使用料など)ということを教えて頂きました。

その後、ワールドカフェで考えた企画をブラッシュアップさせつつ、みんなで確認した予算項目に実際に現実的な数字を入れる作業をしました。ここでは近藤さんの提案で「助成金○円」「協賛金○円」「会場費減免」などが書かれた紙をくじで引く、というアイデアが取り入れられました。赤字が出そうな企画が助成金の補填によってギリギリ成立したり、逆に協賛金が集まり過ぎて困ってしまったり・・・。

実際に事業企画をしたことのある人にとっては当たり前のことでも、やったことのない人にとっては、「想像もつかない」ことが多いマネジメント業務。しかしその全てを、想像力を働かせてきちんと把握できるか否か、ということが、実現可能な「予算」を立てるためのメチエだということを学んだワークショップでした。