活動報告

1月28日「文学Ⅷ 芸術をめぐる思考 1968年展に向けて」のワークショップを開催しました

2019年2月8日

1月28日(月)に、文学分野のワークショップ「芸術をめぐる思考 1968年展に向けて」を開催しました。ファシリテーターは中村ともえ先生(静岡大学教育学領域准教授)で、ゲストとして静岡県立美術館の川谷承子学芸員をお迎えしました。静岡県立美術館にて近々開催される「1968年 激動の時代の芸術」展を前に、その時代の芸術をめぐる言葉の強度に向き合おうというものです。
最初は中村先生による、何故「1968年」なのかについての趣旨説明。またここで取り上げる「芸術をめぐる思考」は、特定の運動やジャンルに焦点を合わせるものではなく、ジャンル横断的な批評や理論とのこと。
ワークショップは、川谷学芸員による展覧会についての紹介をはさみ、前半と後半の2部構成でした。

【ワークショップ(前半・全体)】混ぜて、分割して、音読する
まず、中村先生特製の言葉のカードが紹介されました。批評家や芸術家25名による41の文章から、その核心とも言うべき箇所が抜き出され、さらにそれを4つに分割した断片がカードになっています。シャッフルされたカードを、受講者ごとに8枚配布されました。この段階では著者名や書名また芸術ジャンルは伏せられ、番号のみ明示されています。
次で、中村先生が番号を示し、その番号のカードを持っている人が立って、分割されている4枚を順番に、大きな声でゆっくりめに音読してゆきます。内容の理解や解説は後に回して、「言葉(の力)だけに集中すること、言葉の生の状態に向き合うこと」が求められました。一つの文章を読み終えると、その最初のカードを持っている人に残りの3枚が渡されます。12の文章か13の文章を音読したところで、前半のワークを終了。教室には、1968年に飛び交っていた芸術をめぐる言葉が、確かな存在感を持って立ち上がってきました。
最後に、中村先生からカードの出典を記した一覧と、著者の人名・著書名リストが配布され、文の冒頭部のカードに、その著者名と文の標題を書き入れました。

【講演】「1968年 激動の時代の芸術」展について(川谷承子学芸員)
「1968年」展は、千葉市美術館、北九州市立美術館との共同企画であること、また特定の年をジャンル横断的に輪切りで示す展覧会は珍しいという説明があり、前半に行われた1968年前後の言葉が、展示作品や資料の背後に存在しているという指摘がありました。スライドで、主な展示作品の紹介があり、また静岡と縁の深い美術批評家の石子順造や静岡在住の美術家によるグループ幻触の活動を、その時代のアクチュアリティの中で見直す機会でもあることが語られました。展示される作品と関連資料の数は、通常の展覧会を大きく超える400点以上というボリューム。「資料も作品も全て等価に提示されている」という言葉が印象に残りました。

【ワークショップ(後半・グループ)】集めて、つきあわせて、考える
後半は、受講者の手元に4分割したカードが全て揃い、また著者名とジャンル、文章の標題が分かっている状態でスタートしました。
そしてそこから、さしあたり文章の主張や論旨ではなく、キーワードのみを拾い上げるワークを行いました。まずは個人で、次いでグループでそれぞれ拾い上げたキーワードと文章との関係を紹介し合い、その後、グループの中でさらに共通するキーワードがあるかが、話し合われました。
その後、3つのグループから、グループで話し合われたことについて報告があり、ワークショップを終了。
最後に中村先生から、各自の手元にあるカードがプレゼントされ、また配付資料を参照して、このワークショップで取り上げた文章を読んでみることが奨められて全ての活動を終了しました。

難解とされる「現代美術」の展覧会を前に、その背後に存在する思考や言葉に焦点を当てたワークショップを行うことは、意味深い実践だったように思います。2月10日から開催される「1968年 激動の時代の芸術」展への期待や関心が高まったことは間違いありません。



2月2日 「夏目漱石とクラシック音楽」記念講演を開催しました

2019年2月7日

2月2日(土) 平成30年度 大学における文化芸術推進事業「アートマネジメント人材育成のためのワークショップ100 〜地域リソースの発掘・連環・創造のために〜」の3年間の総括として、音楽学者であり音楽プロデューサーの瀧井敬子先生を講師としてお招きして、「夏目漱石とクラシック音楽」と題して、記念講演をおこないました(第二部は、白井嘉尚 静岡大学教授による「フリージグソーパズル・ワークショップ」を開催、於:仰徳記念館=掛川市)。
 会は冒頭に、本事業の責任者である白井嘉尚教授より、3年間の取り組みと気づき、将来展望を含めた挨拶がありました。

 続いて、瀧井敬子先生の講演会です。多くの方の中では、漱石と言えば、文学の人(文豪)という印象ではないでしょうか。アートに詳しい方なら、漱石の文学作品には、多くの美術関係の記述があることもご存知でしょう。しかし、漱石にはもう一つの側面がある、と発言されているのが瀧井先生です。その瀧井先生の実証性を重んじる研究は更にそこに「音楽の漱石」という顔を加えていきました。ややかたい言葉で言えば、「明治期における文豪の西洋音楽の受容」ということになります。その研究は、漱石自身の日記や手紙、メモ書き、当時の新聞等を日本語のみならず、他言語の資料(史料)にもあたるという、気の遠くなるような緻密な作業によって実証されていきます。

瀧井先がこの日に話された、主にアートマネージャーに向かって話されたポイントは、要約すれば次の6つになります。
1, テーマの独創性を重視する
2, 記念年を生かす
3, 漱石のハイカラの美意識を尊重
4, コンサートに演劇的要素を入れて、薬味をきかす
5, 現代日本の問題を企画に盛り込む。「地方創生」
6, 美術作品としてのポスター作成の試み(ゲストアーティスト・柳澤紀子氏)

一つひとつの項目について解説をしている紙幅はありませんが、瀧井先生プロデュースで行われた夏目漱石生誕150周年記念「漱石が上野で聴いた『ハイカラの音楽会』」(2017.10.15,東京文化会館大ホール,2300人収容)をいっぱいにしたコンサート、並びに「レクチャーコンサート 漱石の体験した洋楽 〜室内楽と喜歌劇『ボッカチオ』」(2017.10.28,東京文化会館小ホール)の映像を拝見しながら、そのマネジメント手法におけるポイントを詳しく解説頂きました。

ちなみに、この日の運営は、司会進行からもてなし、会場の運営にあたってくれたのは、本ワークショップ100の受講者の皆さんでした。
全体進行役の村上佳奈さん、受付業務の青木三枝さん、もてなしの本間美智子さん、受け入れの伊東顕さん、加藤麻紀さん、高橋晃一朗さん、飯塚泰さん、そうして、会場で臨機応援に動いてくださった受講者の皆さん、ありがとうございました。この場をもって篤く御礼申し上げます。そうして、全受講者の皆さん、3年間の長きにわたって同走してくださってありがとうございました。


1月15日「プレスリリース アートマネジメントに求められる言葉力 〜表現者と記者の双方の幸せのために」のワークショップを開催しました

2019年1月23日

2019年1月15日 静岡新聞社 文化生活部部長兼論説委員の川内十郎さんを講師にお招きして、「アートマネジメントに求められる言葉力 〜表現者と記者の双方の幸せのために」と題してワークショップを実施しました。

この日、川内さんが一貫して述べられたことは、「言葉力」を磨くということです。ここでいう言葉力とは、「届く言葉」「本質を突いた言葉」のことであり、たんに上手に話す方法とかオシャレな言葉遣いをいっているのではありません。多くの芸術活動が非言語の要素が多いなか、アート(ここでは広く文化芸術の意)の言語化は記者と当時者(アーティスト、アートマネージャー等)の共同作業であり、より精度の高い言葉を共有できたときに、はじめて新たな地平が見え、両者の垣根を越えて第三者にも届く力を持つのです。それは場合によっては「世界」を変える力にも繋がるのではないでしょうか。

川内さんは、自らの豊富なアート体験、エピソード、実際の取組を語りながら、今話している「この語り」そのものが「自分」を語るひとつの方法の対象として観察して欲しいとも述べられました。
その言葉力をどう高めるかについては、アートについて書かれた新聞記事をよく読み込むこと、地方紙は地域に生きる人や出身者を大事にする(ローカルにおけるアート、アーティストの旬の情報がある)、劇評やコンサート評は言葉の宝庫(だから注視することが重要)、だと助言されます。
「要は芸術の周辺にある言葉に多く触れ、言葉を知り、言葉を使う経験を繰り返すことが『言葉力』を高める」ことに繋がるのだと。そうして、表面的でない生きた言葉を届けることで、記者にもう一度会いたいと思わせる力を身に付けることが可能になるのだとまとめられました。

後半は、これらのアドバイスをもとに、模擬記者会見を行いました。
まず、自身が取り組んでいること・取り組みたいことを10分間でペーパーにまとめました。次いで、受講者が指名を受け、あるいは自ら手をあげ、記者会見席に座り、取組について発表します。あとの受講者は全員記者会見に参加している記者となり、次々と質問をぶっつけていきます。まとめは、今の記者会見の場を全員で振り返る、という方法をとりました。

良い記者会見は、良い発表(言葉力がある)、良い質問の両輪によって成り立っていることを改めて実感しました。そうして、間違いなく「表現者と記者の双方の幸せのために」言葉力を磨くことで、アートの現場をより質の高い次元へと移行していけるのです。

11月26日「美術ⅩⅣ~アクマを探せ!」のワークショップを開催しました

2019年1月11日

11月26日は美術作家の木坂宏次朗氏をお招きし「アクマを探せ!」というタイトルのワークショップを静岡大学附属図書館のセミナールームで行いました。ことばの概念の中にしか無い「アクマ」の実態を視覚的に捉えてみようというのがこのワークショップの狙いでした。

前半のワークでは「アクマ」の対義語として「天使」からイメージされるもの、その出会いについてそれぞれが発表し、話し合います。その後、グループ毎にテーマの書かれたカード(「音(音楽)」「手触り」「哲学」など)を引き、それに基づいて、さらにグループで話し合います。図書館という場所もうまく利用しながら、必要に応じてリサーチも行います。

方針が固まったグループから作品を制作します。与えられた材料はケント紙、コピー用紙、タコ糸、のり、ペン、ハサミなどとてもシンプルなものでした。表現の方法は自由だったため、舞踊や録音された声、造形物など様々でした。そこからさらにグループ毎にテーマに沿った四行詩を作りました。一人ずつ、起承転結を決めて1行ずつ書いていきます(グループの中でお互いに見せ合わない)。最後に各グループの制作した「アクマ」と四行詩を発表し、講師の講評を貰いました。

決して簡単なワークではありませんでしたが、それぞれのグループから非常に興味深い、作品が発表されました。一つ一つが熟慮された内容で、受講者の皆さんの発想の豊かさと、アイデアを深め、まとめる力の高さに驚いた1日でした。

11月12日「受講者企画 まちづくり×自転車」のワークショップを開催しました

2019年1月11日

11月12日は自転車を切り口にした受講者企画のワークショップを番町市民活動センターで行いました。ご担当はこのワークショップシリーズを一年目から受講されている高橋晃一郎さんです。この企画は受講者にワークショップのアイデアを出していただき、教員がそれらをサポートしながら進めます。

高橋さんは静岡市内のビジネスホテルに置かれているレンタルサイクルがあまり利用されていない事に着眼しました。これらをもっと街の魅力を発見するためのツールとして使えないかという発想からこの企画が生まれました。

講師には(株)バイシクルわたなべの元会長の渡邉正之さん(現・本覚寺執事)においでいただき、前半は静岡における自転車の歴史や自転車を通じて見る街のあり方などをお話しいただきました。日本でこれまで一般的だった通勤、通学、買い物という使い方ではないあり方を提唱し、自転車を通じて文化水準を上げる活動をされてこられたお話はとても興味深いものでした。

後半は受講者が集合前に各ビジネスホテルから借りて来た自転車で、4グループに分かれてサイクリングに出かけました。出発時にグループの代表者は「Strava」というランニングやサイクリングの記録をつけることのできるアプリをONにします。そうすることで、グループがどこを巡ったか、軌道を残すことができます。

約3時間のサイクリングの後に再度集合し、街で撮影した写真を模造紙に貼り、自分たちが見てきた街の様子についてグループ毎に発表しました。徒歩でも車でもない「自転車」というツールを使ったからこそ見えた街の魅力を共有し、和やかにワークショップを終えました。

11月5日「芸術とお金」のワークショップを開催しました

2019年1月11日

11月5日は明治学院大学の林公則先生をお招きし「芸術とお金」をテーマにお話をしていただきました。林先生は『新・贈与論 お金との付き合い方で社会が変わる』(コモンズ、2017)を出版しておられる経済学者です。前半はドイツの事例などを紹介しながら「お金とは何か?何のために存在しているのか?」といった側面からお話いただき、後半は「芸術とお金に関して考えたこと、普段考えていること、どんな課題や問題点があると感じているか」「芸術を金銭面で支援する具体的な方法としてどのようなやり方がありうるか、またなぜそのようなやり方をとるのか」などについて話し合い、話し合った内容を発表しました。

受講者達は普段の活動を通じて疑問や違和感を感じていることについて、他者と意見交換をするために、それらを言語化し、思考の整理が出来たようです。簡単に解決策は見つかりませんが、課題の共有が出来たことは大きな収穫だったと思います。

10月29日「映像×音楽」のワークショップを開催しました

2019年1月11日

10月29日は作曲家でピアニストの谷川賢作さん、サックス奏者の宮野裕司さん、京都造形芸術大学の山本起也先生においでいただき、グランシップのリハーサル室で音楽と映像をテーマにしたワークショップを行いました。

前半のワークではグループに分かれて山本先生がご持参くださったカメラで無声映画を撮影。それぞれにテーマとストーリーを決め、屋内外でショートムービーを撮りました。事前に課題として撮りたいテーマを考えてくること、また撮りたい「モノ」を持ってくることが出されていたため、多くの受講者がイメージを膨らませてから参加していました。映像にはそれぞれが持ち寄ったアイデアが多分に生かされていたと思います。

後半のワークでは撮影した映像に合わせて、谷川さん、宮野さんが音楽を奏でてくださいました。映像に音が付くことによって、印象やイメージが大きく変化することを学びました。また持ち寄った楽器での即興演奏も行い、終始楽しい雰囲気でワークを終えることができました。

10月17日「コンサートマネジメント(2回目)」のワークショップを開催しました

2019年1月11日

10月17日は音響エンジニアの木村哲氏をお招きして「コンサートマネジメント」の2回目のワークショップを行いました。このワークショップは7月5日に行われたワークショップを、実際のコンサートの現場で、コンサートスタッフとして実践する内容でした。

会場は静岡駅前のサールナートホール。事前に細部までシミュレーションしていたお陰で、当日はお客様やアーティスト達にもほとんどご迷惑をおかけすることなく、無事に本番を終えることができました。当日、曲目の変更によってスタッフワークが多少変更になることもありましたが、概ね恙なく進みました。

このワークショップを通じて、催事の運営は事前にいかに細部までイメージができるかどうか、またそれをスタッフの間でどれくらいきちんと共有できるかによって円滑に進むか否かが決まることを実感しました。

「ワークショップで創る、地域×アート×私」公開ワークショップ参加者募集、2019年2月2日(土)

2019年1月8日

「ワークショップで創る、地域×アート×私」
活動報告と体験 公開ワークショップ参加者募集

静岡大学は、文化庁「大学における文化芸術推進事業」として、3年間でアートマネジメント人材育成のためのワークショップを100つくることに取り組み、最終年度の3年目が間もなく終了します。
そこで、これまでの活動の総括として、ご報告、記念講演、公開ワークショップを実施します。一人でも多くの皆様とこの取り組みの成果を共有したく、ぜひ、ご参加ください。

 

【日時】
2019年2月2日(土)
13:00〜16:30予定(12:30 受付開始)

【申込締切】
2019年1月24日(木)

【会場】
記念講演:大日本報徳社仰徳記念館(掛川市掛川1176)
ワークショップ:掛川市二の丸美術館(掛川1142-1)

 

詳しい情報、参加申し込みページはこちらから

 

12月17日「受講者企画 演劇×建築」のワークショップを開催しました

2019年1月7日

12月17日 演出家・飴屋法水氏(アシスタント:くるみ氏、西島亜紀氏、本間義章氏)を講師に、受講者企画(企画・運営:本間美智子氏)の「演劇×建築」のワークショップを実施した。

ワークショップは、早朝JR静岡駅近くに横付けされたマイクロバスの中から始まった。目的地は、駅から約1時間半の地にある静岡市葵区崩野・八草地区。
バスのなかで、飴屋氏は、ワークショップ受講者15人一人ひとりにインタビューするように丁寧にそのキャラクターの性格付けをおこなった。これは本日実施される演劇×建築の配役決めのようにもみえる。

拠点となる目的に着き、まずは崩野の集落を探索、その後、既に廃村となっている八草地区に移動、ワークショップの舞台となる村落を見て回った。
その後、一軒の廃屋を前にして、飴屋氏からワークショップのミッションが与えられた。

「もしも、この村落にかつて自分が住んでいたら、それはどんな家か。(名前は)何家なのか。それは何人家族なのか。その家の絵・設計図を、この廃屋とその周辺で拾った家の材料等に描き、その家がかつて建っていた場所に設置する」

その後、受講者らは、自ら想像を巡らした「家」を描き、村落のそれぞれの場所に置いていき、その場でプレゼンテーション、飴屋氏がそれにコメントを付けていった。想像と創造、そうして現実という場の力とが重なり、いつの間にか八草の廃村が演劇の舞台となっているのを感じた。

日没前に一行は、ある沢に移動、そこで自ら描いた「家」に火をつけ燃やした。
講師の飴屋氏も燃えてしまった。果たして、飴屋氏はこの日、この時間帯に本当に実在したのであろうか。

すべての「儀式」という舞台が終わったとき、日はどっぷりと暮れていた。そこでの行為は記憶となって、八草の歴史と重なった。

追伸:
後に飴屋氏は、受講者が描いた設計図を村落の「その場」に残してくるという仕方もあった。そこでその絵は朽ちていき、八草の歴史と重なっていくと語っていたのが印象に残った。