お知らせ

9月18日「『積層』をキーワードにモノ・コトを考える。〜学校という『場』において〜」のワークショップを開催しました

2018年9月21日

奈木和彦ワークショップ「『積層』をキーワードにモノ・コトを考える。〜学校という『場』において〜」

9月18日(火)に、美術家の奈木和彦さんを講師に迎え、美術分野のワークショップ「『積層』をキーワードにモノ・コトを考える。〜学校という『場』において〜」を開催しました。
奈木さんは、静岡を拠点に、絵画を独自の切り口で捉え直す試みや、サイトスペシフィックなインスタレーションなど幅広い活動を展開している作家です。
まず導入として、このワークショップの趣旨と流れが説明されました。次いで自己紹介を兼ね、スライドで自身の活動が手短に紹介され、また「積層」という視点のみならず、「並列・連続」の観点からもアメリカのポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホルの作品が読み解かれました。
続いて前半のワークショップに移ります。
まず個人のワーク。「学校」との関係において、「積層」という言葉から連想されるモノ・コトについて自由に思い浮かべます。そして年齢・性別・職業などを異にする4・5人のグループに分かれ、それぞれ「積層」「学校」について協議。そこで浮かんだワードを付箋に記し内容によって分類していきました。
(その間、奈木さんは、「積層」「学校」「積層・学校」等について、あらかじめ用意した言葉を次々と板書。)
それを経て、また個人のワーク。グループでの話し合いを踏まえて、発表を前提に、アイデアスケッチや言葉や文章に起こしていきました。現実的でないプランも可、最終的な形態を示す必要もないとのこと。

休憩を挟み、後半のワークが始まりました。
グループごとの付箋を貼ったA3の紙が黒板に掲示されることで、参加者のブレーンストーミングの結果が明らかになりました。
続いて奈木さんによる実技? ガラスの皿に廃油が注ぎ込まれ、そこにオブラートをリング状に並べてゆきました。オブラートの既成概念が破壊され、その二つの物質は、通常あり得ない関係性のなかで名状しがたいモノのリアリティを出現させました。
その後、「学校×積層」の実例として、小学5年の時に奈木さんを変えた、学校でのある「積層」が紹介されました。それは、古びた3冊の日記です。それまで手に負えない問題児だった奈木さんは、新たに担任となった先生から毎日日記を書くように言われ、また先生が朱筆で毎日コメントを入れて下さったという、その実物です。1年間通して、学校で朝と夕方、一緒にグラウンドで走って下さったことも一種の「積層」といえるでしょう。日記をずっと取っておいた母親の愛情にも胸を打たれますが、担任の先生の愛情に一同驚嘆。1人の小学生の古い日記に過ぎないのに、提示の仕方によって普遍的なメッセージに変わるということがよく解りました。
次いで、「積層」と「学校」の関係性を、グループから1人の代表が立って約3分間で発表。奈木さんがコメントを加えてゆきました。
最後に、「積層」に関連する奈木さんの作品とコンセプトが、スライドトークの形で紹介されワークショップは終了。
美術分野のワークショップなのですが、ここでは何も作らず、ひたすら「積層」と「学校」との関係についてブレーンストーミングを重ねました。参加者は美術に詳しい人ばかりではないので、当初、難しい課題かもしれないと感じていたのですが、始まってみると、ここで扱う内容についての奈木さんの周到な準備と流れについての予想、そして現場での余裕を持った臨機応変の対応によって、参加者は無理なく課題の意図をつかむことができたように思います。

9月10日「受講者企画 建築へのアプローチ」のワークショップを開催しました

2018年9月19日

9月10日(月)に「受講者企画」として、建築家の柴田彰さんの企画による「建築へのアプローチ」を開催しました。講師は、「カワイイ」をキーワードに建築やデザインの課題を読み解く活動を続けている、プロジェクト・プランナーの真壁智治さんです。内容は、「カワイイ演習」と「フロッタージュ演習」の2本立て。午前中の1コマがレクチャー、午後の2コマをワークショップと発表の時間としました。
レクチャーでは、バウハウスから現代までの建築概念の変化について、ミース・ファン・デル・ローエの言葉「Less is more」とロバート・ヴェンチューリの言葉「Less is bore」の対比、また建築は誰のため・何のためのものか、という根本的な問題と、その変遷についての説明がありました。日本では、丹下健三の「国家と民衆」、槙文彦の「社会と人間」、伊東豊雄の「消費社会と大衆」そして「コミュニティとみんな」、隈研吾の「場所と市民」、藤本壮介の「都市と自分」、妹島和世の「世界と私」、塚本由晴の「地域社会と人びと」などが挙げられ、その流れは「理性合意による建築」から「感性共有による建築」に向かっているとの見通しが語られ、次第に、建築を巡る作り手と使い手との感覚共有化の事態にあることが示されました。
次いで、「カワイイ演習」の解説。まず四方田犬彦著「かわいい論」(2006年)が紹介され、真壁さんが提唱するカタカナの「カワイイ」について、テキスト「カワイイパラダイムデザイン研究」(2009年)に沿っての説明がありました。テキストには、13の視点を導入した別価値の交差座標のマトリックスが示され、モダンデザインで否定されてきた、「緩み」「不合理」「ホワ感」「ヌケ感」「スケ感」「フワ感」等々のカワイイ感性領域の構造を分かりやすく説明してくださいました。
続けて、フロッタージュの説明。シュールレアリスト、マックス・エルンストのフロッタージュを、「意識が描く想念を超えた形象をつかむ」ための手法とし、それに比し、真壁さんのフロッタージュは建築や都市の位相にアプローチする方法であり、「自分の身体と対象との感応」を問題にしている手法であることが語られました。
また昼休みの課題として、エイジミックスからなる3・4人のグループで、「キャンパス内で『カワイイ』を探す」、が投げかけられ午前中のレクチャーを終了。

午後はまず、都市や建築の問題とフロッタージュの関係について、テキストに沿って説明。フロッタージュは8段階のフェイズに分節化され、その対象と自身の行為には、「気」を通すことが大切で、それを野口晴哉の活元運動と絡めて解説してくださいました。ついで、真壁さんによる活元運動の実演。次いで受講者も試行。
フロッタージュの活動は、あいにくの雨天のため屋内のみでの実施となりました。13:50〜14:50までの約1時間、受講者は教育学部建物内の廊下や階段、バルコニー、彫刻アトリエなどで取り組みました。
教室に戻り、15:10からは、昼休みに構内で見つけた「カワイイ」の写真をパソコンに取り込み、スクリーンに投影してグループごとに発表。またそれぞれの写真に、真壁さんが豊かな語彙を駆使して絶妙のコメントを連発。発見と歓声に満ちた時間が流れました。「ここでは“まぬけ”が評価の対象」「モダニズムの建築自体が既に懐かしさになっている」等々。受講者は、「カワイイ」の感性領域の広がりについて確かな目覚めがあったように思います。
最後に、企画者の柴田さんの指名によりグループから一人づつ、ワークショップの感想について発表があり「カワイイ演習」は終了。時間は超過しましたが、その後、フロッタージュを床一面に並べ、受講者が建築と身体性を通して接した痕跡を目の当たりにして、建築を感覚と身体から身近にするワークショップ、「建築へのアプローチ」を終了しました。

9月3日「展示」のワークショップを開催しました

2018年9月11日

去る、9月3日(月)展示のWSを開催しました。

講師は、美術家の麻殖生素子(まいお もとこ)さん。麻殖生さんは1980年代から独自の手法で屏風世界に革新をおこし、その才能をめきめきと発揮されていきます。国内では、東京は銀座、京都は清水寺、二条城、泉涌寺、鎌倉は浄智寺、円覚寺他多数、一方、海外でもニューヨーク、ワシントン、ジュネーブ、メルボルン等で個展やグループ展を開催、国際的にも不動の評価を得ます。

そんな麻殖生さんが今回のWSの舞台に選んだのは、中勘助文学記念館(静岡市葵区)、小説『銀の匙』で有名な作家を顕彰して建てられた記念館です(設置者:静岡市、管理運営:静岡市文化振興財団)。

前半は、麻殖生さんにより、屏風の基礎知識を習い、受講者も実際に屏風を扱ってみるという体験をしました。現代の生活からだいぶ遠い存在になってしまった屏風のためか、受講者は屏風の扱いに慣れていません。最初は、どこを持って動かしていいのか、どのくらい開いて立てるのかなども一切分からず、ひじょうに心許ない状況でした。

第二部では、実際に麻殖生さんの作品を使って、約6畳二間の空間にいかに複数の屏風を並べるかということに挑戦しました。それぞれのグループがテーマにそって屏風作品を展示していきました。麻殖生さんは、4グループの各発表を聞いて、受講者の意図を汲み取り的確にアドバイスをしていきます。受講者の展示のできは麻殖生さんの想像以上だったとみえて、各展示の視点のすばらしさを中心に挙げていかれました。

最後は、たっぷりと時間をかけて、感想や疑問点をみんなで共有しあいました。WSはやりっ放しではなく、最後に必ずたっぷりと時間をかけて振り返る時間こそが重要だと実感した時間となりました。

8月20日「著作権」のワークショップを開催しました

2018年8月29日

8月20日、実務系のワークショップ、「著作権」を実施しました。講師は、骨董通り法律事務所代表パートナー 弁護士、ニューヨーク州弁護士の福井健策さんです。タイトルは、「マスターする著作権とライツ」です。

福井さんは、ワークショップの冒頭、受講者に向かってこう教えました。
「きょうこれだけは覚えて帰ってください。それは、『著作物とは、思想・感情を〈創造的〉に〈表現〉したもの・・・』(※プリント上では穴埋め形式になっていた)。加えて、著作物の例として、①小説・脚本・講演など ②音楽 ③舞踊。無言劇 ④美術 ⑤建築 ⑥図形 ⑦映画・ ⑧写真 ⑨プログラムがあります。ここまで覚えてもらえれば、日常生活に係わる著作物の99%はカバーできます。」

例えば、③の、ある演出家の振り付けですが、これは著作物です。勝手に踊ってそれをネットにアップしたり、舞台で使うと問題になることがあります。また、⑤の有名建築家が設計した建築物は著作物ですから注意が必要です。ただし、建て売り住宅は、著作物とは言えません。ちょっとここでは乱暴に記しますが(福井先生はきっちと説明してくださいましたが)、ありふれた表現、定石的な表現、事実、データなどは著作権に抵触しません。題名とか名称も同様です。ですから、私たちがたとえば小説などを書く場合、その中に鉄腕アトムやミッキーマウスという言葉を使うのは問題ありません。もちろん画像は勝手に使えません。
このように受講者は、具体的な事例を参考に著作物、著作権の基礎の基礎を頭に入れていきます。繰り返しますが、ここで大事なのは、「創作的な表現」ということです。

今回の進行は、講義の合間合間にそれに関連したワークショップ(グループワーク)が挿入されていくという形式が取られました。
受講者らが自らの導き出した意見を言う度に福井先生の「なるほど」「そう判断した根拠は何ですか」という鋭い突っ込みが入ります。全員が発表し終わると、福井先生から、これまでの判例や法に遵守したアドバスが入りました。とにかく実例をワークショップ形式で議論していくので、たんに知識を押しつけられたのと違って、記憶が濃く刻まれていきます。

その他、ナショナルアーカイブ構想、作品デジタル公開と権利の現状と課題、世界が直面するオーファン問題、図書館著作権規定の到達点、他にも肖像権の問題などに触れて頂きました。

日々、SNS等で情報を取り、アップする私たち。知らない、ではすまされないアートマネージャーの知識の習得という課題が目の前にあることを改めて突きつけられたワークショップでした。

福井先生は、最後の最後に、こう釘を刺されました。
「一週間経ったら、わたしがきょう配布したレジュメを必ず見直してください」。
大丈夫でしょうか、受講者のみなさん。

8月6日「文学Ⅵ」のワークショップを開催しました

2018年8月22日

小二田誠二ワークショップ「浮世絵を読んでみる」

 

8月6日(月)に、静岡大学人文社会科学部の小二田誠二先生を講師に迎え、文学分野のワークショップ「浮世絵を読んでみる」を開催しました。

江戸時代の木版画、浮世絵は、印象派の誕生に大きな影響を与えたこともあり、美術の文脈で紹介されることが多いのですが、江戸文化を映し出す鏡でもあります。

ワークショップの会場には、先生が所蔵する幕末から明治にかけての浮世絵コレクション数百点が持ち込まれ、またそれを読み解くために様々な入門書・専門書が持ち込まれていました。

最初は自己紹介。専門は美術史ではなく、江戸から明治にかけてのメディアと表現であるとのこと。また絵画については、そこに込められた「メッセージやストーリーを積極的に読み解いてゆく」姿勢で接していることが語られました。その意味では、浮世絵展の多くは解説が少ないとの疑問を提示。本ワークショップでは、浮世絵の面白さを分かりやすく伝えるキャプションを作りましょうと投げかけられました。

続いて、小手調べ。「國貞改 二代豊國画」と記された、『百人一首繪抄』という作品のカラーコピーが配布され、その絵からどのような内容を読み取ることができるかというワーク。受講者は画中の「美人」の仕草と、文字情報の読み取れる箇所をつなぎ合わせ、絵の内容を推察し発表しました。それを受け、小二田先生からは、浮世絵を読み解くためのポイントである、文字(くずし字)情報と版元印や検閲印などの記号情報についての解説、さらに「見立て」や文様についても重要との指摘がありました。

前半の最後はグループに分かれ、キャプション作りに向けて、数多の浮世絵から1点(1組)の作品の選び出しました。結果、芝居絵を選んだのが5グループ、物語絵が1グループでした。そして、制作年を推定するための専門書、石井研堂の本や『歌舞伎年表』などの文献を参照する方法について説明がありました。

昼休みを挟み、後半は、グループごとに専門書にあたって、制作年代等の基本情報を探りました。小二田先生は、机の間を巡回しながら、それぞれの浮世絵の読み方についてポイントを指摘してくださいました。約1時間のワークで、絵師、出版年月、落款、改印、彫摺師、版元、作品名、画題等々の基本情報、また芝居絵であれば、上演月日や演目や配役などの上演情報などを集中して調べました。調べても分からないことについては、時間的な制約もあるので、今回は「不明」「不詳」「……か」で対処するとのこと。それら基本情報を確定することは、目標である「絵画に秘められたストーリー」を読み解き、分かりやすい解説を書くための必須の条件です。

最後の15分間を使って、グループごとに制作中のキャプションの発表をしました。

最後に小二田先生から、キャプションの精度をより高めるためには、時間外にネットや文献を参照し、磨きをかけていただきたいとのコメントがありワークショップを終了しました。

8月6日「食文化Ⅰ」2回目のワークショップを開催しました。

2018年8月10日

講師は前回に続き、料理家の按田優子さんです。

前回第1回目のワークショップで、自身が地域ときちっと向き合うことで課題を解決してくための宿題が出されました。内容は、以下A,B,Cから業態を選択し(複数可)、いくつかの設問に答えていくというものです。

・業態A「旅館で出てくる朝食」

・業態B「ビジネスホテルの朝食バイキングの数品」

・業態C「地元の素材を使った共同の加工所」

大事なことは、「(現在地域にあるものの中から)残したい・増やしたい資本」を決め、そこに「自分の持っている資本(技術、経験・体験、ネットワーク等)」を最大限に生かしつつ、「業態」を決めていくことです。言い換えるなら、「地域資源」と「私資本」の掛け算によって、いかにして地域の大切な食(材)を残し、増やしていくかを検討するものです。

 

受講者は、講師の按田さんによって、企画の性質や同一の価値観を持った4〜5人のグループ5班に分けられ、メンバー各人の考えた課題をメンバー間でプレゼンテーションしつつ、最終的にアイデアを一つに絞っていきました。

海のエリアと山のエリアの食材を物々交換によって成立させる暮らし。地酒と静岡特有の缶詰をリソースにした「角打ちバル」。静岡茶葉をがっつり使う料理の加工場の提案等々、アイデアを実現していく場を、静岡県の地図にマッピングしながら検討していきました。

 

2013年に和食がユネスコ世界無形文化財に指定され、同じ年、「静岡の茶草場農業」が、2018年には同じく、「静岡水わさび伝統栽培」が世界農業遺産として認定を受けました。静岡県を軸足に活動していくアートマネージャーにとって、もはや「食文化」を抜きにして、地域の課題は解決できないでしょう。

7月30日「映像Ⅲ」のワークショップを開催しました。

2018年8月10日

7月30日は映画監督で、京都造形芸術大学の山本起也先生をお招きし、「企画の切り口を考える」という内容の映像を使ったワークショップを開催しました。

最初に「企画の切り口を考える」とは、伝えたいものの「コンセプトを捕らえることだ」と教えていただきました。山本先生が実際に作成に関わった商品に関する映像を事例として見た上で、受講者自身もグループワークを通じてアイデアを出し合います。最初の課題は<介護ロボット>。「1分程度で伝わる映像」「日本語がわからない人が見ても分かるもの」「どのような魅力を介在させれば伝わるか?」この3点について20分程度で話し合い、各グループでアイデアを提案しました。

介護をする人、される人、どちらに訴求するのかによって方法が違うことを指摘した上で、受講者たちのアイデアは、その点について先回りして考えられているとコメントを頂きました。

前半二つ目のワークは人手不足が課題の中小企業のプロモーション映像について考えるワークでした。人がそこで働きたくなるよう映像の切り口について考えます。会社の説明だけでなく、その組織が持っているリソース、特にそこで実際に働いている社員にクローズアップした内容についてのアイデアが出てきましたが、それ以外にお若手のホープの幅、豊かさを紹介するような内容や施設、設備のアピールが今の社会では求められていると教えて頂きました。

後半のワークでは実際に携帯の動画撮影機能を使って映像を撮影しました。ある飲料メーカーの商品を対象に、映像を使用して消費者を巻き込む仕組みを考えるのが課題でした。各グループで短い映像を撮影し、最後に全員で鑑賞しました。「これからは顧客にCMを作ってもらう時代」という山本先生のコメント通り、受講者たちは短い時間で、商品のイメージを顧客に訴求する楽しい映像を撮影できたと思います。

 

7月23日「美術Ⅹ」を開催しました。

2018年7月29日

井上明彦ワークショップ「水から/水へ」

 

7月23日(月)に、美術家であり京都市立芸術大学教授の井上明彦さんを講師に迎え、美術分野のワークショップ「水から/水へ」を開催しました。内容は、前半は講義、後半はワークショップです。

講義では、レオナルド・ダ・ヴィンチが晩年に描いた「洪水」のドローイングと幻に終わった「水の書」を導入とし、先の西日本豪雨による大水害にも絡めて、「水」が人間の生存にとって根源的なものであることに注意が促されました。また「水」の科学的な物性や身体と水の関係について説明がありました。

次いで、井上さん発案の京都芸大「@KCUAプロジェクト」を例に、「水」が大学の理念をシンボリックに示し、さらにそれが地域社会との関係と結びついていることが紹介されました。続いて、「水」がご自身のアートプロジェクトにおいて重要なテーマの1つであること、またそれが都市や集落の歴史/記憶/生活と深く結びつく形で展開されていることがスライドを使って紹介されました。

アートと他の領域を「地続きに考える」こと、また西アフリカではアーティストのことを「忘れない人」と呼ぶという発言が印象に残りました。

後半取り組んだ最初のワークショップは「水になる」です。『原初生命体としての人間―野口体操の理論』で知られる元東京芸大教授、野口三千三の言葉を糸口に、受講者が、水入りゴムチューブを体にまとうことで体の中の水を感じるワークをおこないました。グループワークでは、そのチューブの不思議な弾力や水の性質にあちらこちらで歓声があがりました。

次いで、1960年代以降のアートシーンで特筆されるフルクサスの運動に参加したアーティスト、現在は京都芸大の特別招聘研究員でもある塩見允枝子さんのスコア/パフォーマンスの紹介がありました。塩見さんの作品は、言葉がスコア(楽譜/インストラクション)でその解釈は他者に委ねられるとのこと。その中から、「1.水にかたちを与える 2.水にかたちを失わせる」というスコアの紹介があり、井上さんはそれに、「コップ一杯の水から」という条件を加えて、受講者に投げかけました。受講者は、それぞれのやり方で、事務局と講師が用意した準備物や水から持参した物品を使い、「演奏?」を試みました。

スコア/インストラクションを示されてから「演奏?」まで30分余りの時間しかありませんでしたが、受講者は柔軟な思考と感性を発揮して様々な「解釈」を展開しました。

「自分と違う発想に触れることが大事」ということで、全受講者はそれぞれの演奏/パフォーマンスを紹介し活動を終えました。

7月23日 コミュニケーションⅤ「旅する図書館」を開催しました

2018年7月29日

7月23日 「コミュニケーションⅤ」のワークショップを開催しました。

講師は、「旅する図書館」の岡島梓さんと井東順一さんのユニット。

「旅する図書館」は、カフェやゲストハウスなどを旅するように巡って開かれるブックサロン。参加者は、その日のテーマにあわせた本を持ち寄り、その本と自分との関係、あるいは内容を紹介しあうというもの。

今回のテーマは、「きっかけの本」。仕事を変えるきっかけになった本、大切な人のために料理をつくるきっかけになった本、尊敬する先生に将来を後押しされるきっけになった本などが受講者によって持ち寄られ、各々がそのときの情景を想い浮かべながら紹介しあいました。

講師の岡島さんは言います。

「会話と本を通し、訪れた人の明日が楽しく変わるきっかけの場所。ゆるいつながりから、何かが生まれてくる場所。その場に集った人がつくる、二度とない時間が流れる場所。

地域の人、場所の提供者、来訪者、野次馬、企画者、全ての人の明日が楽しくなること。明日からの歩みのきっかけが生まれること。よく循環し、誰にも疎外感を覚えさせないこと。」

本というフィルターを通すことで、社会的な肩書きが一旦はずれ、みんな平等になれるのが、旅する図書館の良いところです。

また時代は、安心社会から信頼社会へと流れが進んでおり、そこでは、「わかりやすさ」「わからなさい」「余白の保証」の三位一体が駆動力になっており、その信頼社会を生きる上で大事なことが旅する図書館の肝にもなっているのです。それは互いが持ち寄った本やその本を通して語る相手の「わからなさ」を否定しないで、一旦受け止めるという態度です。そこにこそこれまでの自分の中にはなかった言葉や事柄、考え方という多様な気づきがあるのです。つまり人間としての成長があるのです。この気づきこそ、信頼社会の屋台骨であり、旅する図書館が大切にしていることなのではないでしょうか。

本の紹介が終わると、二つに別れたグループが、それぞれに持ち寄った本を机の上に並べて置き、メンバーのオーダーによって次々とダイナミックに並び変わっていく醍醐味にトライしました。

最後は、互いのグループの本の配下配列をプレゼンテーションしあって、きょうの旅する図書館@静岡大学を楽しみました。

 

7/17 基礎講義3「地域リソースの発掘・連環・創造に向けたワークショップをめぐって」

2018年7月22日

7月17日(火)に、美術家であり著作『美術、市場、地域通貨をめぐって』『美術館・動物園・精神科施設』『贈与としての美術』などを通じて美術をめぐる先鋭な問題を提起し続ける白川昌生さんと、白川さんとともに「場所・群馬」など地域を拠点に活動を展開する美術家の木暮伸也さんを講師に迎え、基礎講座として「地域リソースの発掘・連環・創造」を実施しました。

 

内容は、大きく3部構成で、前半は白川さんによる講義、後半は木暮さんによる活動のプレゼンテーションと静岡大学の白井を交えた鼎談を行いました。

白川さんの講義は、「アート」の起源についての概説の後、スライドや動画を用いて「場所・群馬」など地域を拠点とした様々な活動についての紹介がありました。

そこでの活動の拠点は、地域の歴史的な建物また商店街の空きスペースや無人駅などです。また、地域の記憶、産業、人々の営みや出来事をめぐって繰り広げられた、従来のアートの概念を超えた多様な実践は受講者に大きな刺激を与えたのではないでしょうか。

後半の木暮さんによるプレゼンでは、作品と場所との関係、作品の変遷、また白川さんと自身が関わる地域アートスポットについて紹介がありました。

その後、白井を交えての鼎談では、地域拠点の具体的な運営のあり方について、また地域のクリエーターの交流拠点としての活動と、より幅広い住民、商店街や多様な地域住民に向けたアートプロジェクトや「祭り」とが並行するように展開されていることが話題となりました。

受講者との質疑応答の時間では、2017年に群馬県立美術館で開催された「群馬の美術2017」における白川さんの作品《群馬県朝鮮人強制連行追悼碑》が展覧会直前に展示取り消しになった問題について質問があり、白川さんからはモニュメントが政治との危ういバランスの上に成立していること、また作品の展示取りやめについては美術館の構造的な問題が背景にあるとの返答がありました。

 

白川さんはその著書『贈与としての美術』のなかで、芸術について「共感、感性、身体感覚という共通性をもちつつ、他者、社会、自然に関係していきながら、関係を再構築していく活動」としていますが、木暮さんの活動も合わせ、その豊かな実践を例示いただくことができたように思います。