1月28日「文学Ⅷ 芸術をめぐる思考 1968年展に向けて」のワークショップを開催しました

1月28日(月)に、文学分野のワークショップ「芸術をめぐる思考 1968年展に向けて」を開催しました。ファシリテーターは中村ともえ先生(静岡大学教育学領域准教授)で、ゲストとして静岡県立美術館の川谷承子学芸員をお迎えしました。静岡県立美術館にて近々開催される「1968年 激動の時代の芸術」展を前に、その時代の芸術をめぐる言葉の強度に向き合おうというものです。
最初は中村先生による、何故「1968年」なのかについての趣旨説明。またここで取り上げる「芸術をめぐる思考」は、特定の運動やジャンルに焦点を合わせるものではなく、ジャンル横断的な批評や理論とのこと。
ワークショップは、川谷学芸員による展覧会についての紹介をはさみ、前半と後半の2部構成でした。

【ワークショップ(前半・全体)】混ぜて、分割して、音読する
まず、中村先生特製の言葉のカードが紹介されました。批評家や芸術家25名による41の文章から、その核心とも言うべき箇所が抜き出され、さらにそれを4つに分割した断片がカードになっています。シャッフルされたカードを、受講者ごとに8枚配布されました。この段階では著者名や書名また芸術ジャンルは伏せられ、番号のみ明示されています。
次で、中村先生が番号を示し、その番号のカードを持っている人が立って、分割されている4枚を順番に、大きな声でゆっくりめに音読してゆきます。内容の理解や解説は後に回して、「言葉(の力)だけに集中すること、言葉の生の状態に向き合うこと」が求められました。一つの文章を読み終えると、その最初のカードを持っている人に残りの3枚が渡されます。12の文章か13の文章を音読したところで、前半のワークを終了。教室には、1968年に飛び交っていた芸術をめぐる言葉が、確かな存在感を持って立ち上がってきました。
最後に、中村先生からカードの出典を記した一覧と、著者の人名・著書名リストが配布され、文の冒頭部のカードに、その著者名と文の標題を書き入れました。

【講演】「1968年 激動の時代の芸術」展について(川谷承子学芸員)
「1968年」展は、千葉市美術館、北九州市立美術館との共同企画であること、また特定の年をジャンル横断的に輪切りで示す展覧会は珍しいという説明があり、前半に行われた1968年前後の言葉が、展示作品や資料の背後に存在しているという指摘がありました。スライドで、主な展示作品の紹介があり、また静岡と縁の深い美術批評家の石子順造や静岡在住の美術家によるグループ幻触の活動を、その時代のアクチュアリティの中で見直す機会でもあることが語られました。展示される作品と関連資料の数は、通常の展覧会を大きく超える400点以上というボリューム。「資料も作品も全て等価に提示されている」という言葉が印象に残りました。

【ワークショップ(後半・グループ)】集めて、つきあわせて、考える
後半は、受講者の手元に4分割したカードが全て揃い、また著者名とジャンル、文章の標題が分かっている状態でスタートしました。
そしてそこから、さしあたり文章の主張や論旨ではなく、キーワードのみを拾い上げるワークを行いました。まずは個人で、次いでグループでそれぞれ拾い上げたキーワードと文章との関係を紹介し合い、その後、グループの中でさらに共通するキーワードがあるかが、話し合われました。
その後、3つのグループから、グループで話し合われたことについて報告があり、ワークショップを終了。
最後に中村先生から、各自の手元にあるカードがプレゼントされ、また配付資料を参照して、このワークショップで取り上げた文章を読んでみることが奨められて全ての活動を終了しました。

難解とされる「現代美術」の展覧会を前に、その背後に存在する思考や言葉に焦点を当てたワークショップを行うことは、意味深い実践だったように思います。2月10日から開催される「1968年 激動の時代の芸術」展への期待や関心が高まったことは間違いありません。



2月2日 「夏目漱石とクラシック音楽」記念講演を開催しました

2月2日(土) 平成30年度 大学における文化芸術推進事業「アートマネジメント人材育成のためのワークショップ100 〜地域リソースの発掘・連環・創造のために〜」の3年間の総括として、音楽学者であり音楽プロデューサーの瀧井敬子先生を講師としてお招きして、「夏目漱石とクラシック音楽」と題して、記念講演をおこないました(第二部は、白井嘉尚 静岡大学教授による「フリージグソーパズル・ワークショップ」を開催、於:仰徳記念館=掛川市)。
 会は冒頭に、本事業の責任者である白井嘉尚教授より、3年間の取り組みと気づき、将来展望を含めた挨拶がありました。

 続いて、瀧井敬子先生の講演会です。多くの方の中では、漱石と言えば、文学の人(文豪)という印象ではないでしょうか。アートに詳しい方なら、漱石の文学作品には、多くの美術関係の記述があることもご存知でしょう。しかし、漱石にはもう一つの側面がある、と発言されているのが瀧井先生です。その瀧井先生の実証性を重んじる研究は更にそこに「音楽の漱石」という顔を加えていきました。ややかたい言葉で言えば、「明治期における文豪の西洋音楽の受容」ということになります。その研究は、漱石自身の日記や手紙、メモ書き、当時の新聞等を日本語のみならず、他言語の資料(史料)にもあたるという、気の遠くなるような緻密な作業によって実証されていきます。

瀧井先がこの日に話された、主にアートマネージャーに向かって話されたポイントは、要約すれば次の6つになります。
1, テーマの独創性を重視する
2, 記念年を生かす
3, 漱石のハイカラの美意識を尊重
4, コンサートに演劇的要素を入れて、薬味をきかす
5, 現代日本の問題を企画に盛り込む。「地方創生」
6, 美術作品としてのポスター作成の試み(ゲストアーティスト・柳澤紀子氏)

一つひとつの項目について解説をしている紙幅はありませんが、瀧井先生プロデュースで行われた夏目漱石生誕150周年記念「漱石が上野で聴いた『ハイカラの音楽会』」(2017.10.15,東京文化会館大ホール,2300人収容)をいっぱいにしたコンサート、並びに「レクチャーコンサート 漱石の体験した洋楽 〜室内楽と喜歌劇『ボッカチオ』」(2017.10.28,東京文化会館小ホール)の映像を拝見しながら、そのマネジメント手法におけるポイントを詳しく解説頂きました。

ちなみに、この日の運営は、司会進行からもてなし、会場の運営にあたってくれたのは、本ワークショップ100の受講者の皆さんでした。
全体進行役の村上佳奈さん、受付業務の青木三枝さん、もてなしの本間美智子さん、受け入れの伊東顕さん、加藤麻紀さん、高橋晃一朗さん、飯塚泰さん、そうして、会場で臨機応援に動いてくださった受講者の皆さん、ありがとうございました。この場をもって篤く御礼申し上げます。そうして、全受講者の皆さん、3年間の長きにわたって同走してくださってありがとうございました。