12月10日 美術ⅩⅥ ~木育(もくいく)ワークショップ「MOTTAINAI工房&木育カフェ」~を開催しました

12月10日(月)に、岐阜県立森林文化アカデミー教授で木育実践研究者・彫刻家の松井勅尚さんと、木育インストラクターでNPOmusubi代表の吉田理恵さんをファシリテーターにお迎えし、木育ワークショップを開催しました。「木育」とは、2004年に環境教育の1つとして、北海道庁が作った概念とのこと。松井さんは、「木と人の命を大切にする心を育むため」と捉えているそうです。内容は、午前中がレクチャー、そして午後は「MOTTAINAI工房体験」と「木育カフェ」の三部構成です。
レクチャー:10:20〜12:05
導入は松井さんより、現状のご自身の様々な活動の基盤となるキーワード、「ダイバーシティ(多様性)」、「CSV:Creating Shared Value(共通価値の創造):マイケル・ポーター」、「ライフシフト(人生百年時代の生き残り戦略)」の説明があり、関連する自作の紹介がありました。次いで、「木育」の目的や活動の広がりについて解説。またそれを推進する上で共感し、多様性の1つとして取り入れたイタリアのレッジョ・エミリアの実践について、詳しく紹介してくださいました。その根幹が平和教育であること。もの・人・こと(人の行動)に対して心配りをする「ケア」という概念の素晴らしさ。影響を受けた創造的リサイクルセンター「Remida」等々についてです。
最後に午後の流れを紹介し、レクチャーを終えました。
MOTTAINAI工房:12:55〜14:20
最初は、「ケア」の実践。言葉を交わさないという条件で、まず机の上、次に机(周辺)のケアを試行。グループごと、どんなケアをしたのか話し合い、そして松井さんがコメント。「美しさは十人十色。しかし、美しくしようとしているその願いが一番大事」との言葉が印象的でした。
その間、吉田さんによって、広い作業台の上に身の回りにある様々なもの、枯れ葉、木の実、小石、割り箸、ストロー、輪ゴム、ひも、ペットボトルのキャップ等々、普段は見過ごされがちなものが丁寧に並べられていきました。一つ一つの素材が際立つように、美しく見えるように配置されています。
次に、受講者は1人あたり5個までのモノを選択、A3の紙の上に組み合わせて置くワーク。作品は、モノとしてではなく写真に撮って残すというやり方で、次々と試行していきました。「色んなものが色んな形に見えてきて、世界が広がった」とは受講者が漏らした言葉です。その後、プロジェクターでスクリーンに投影し、交流の時間を持ちました。最後に、松井さんから、MOTTAINAI工房の活動を通し子どもたちに伝えたいこと、大切なことについて説明が加えられてこの活動を終えました。
木育カフェ:14:30〜15:55
吉田さんがファシリテーターとなり、自己紹介の後、木育カフェについて「木のものづくり+コミュニケーション」であるとの説明がありました。次いで、サクラとクリの木の枝を生かしアイスクリームスプーン作りをするワーク。予めスプーンの形に切り出された木片と、紙やすりが配布されました。そしてグループに分かれてここまでの活動について談笑しながら、使いやすい形に加工します。途中で2回ほど新たな話題が提示され、またグループのメンバーがシャッフルされることで、新たな交流が生まれました。50分間ほどの作業で、木片は使いやすそうなスプーンの姿に変容。仕上げは亜麻仁油をしみ込ませて完成。最後はティータイム。温かいお茶を飲みながら、受講者同士、またファシリテーターの松井さんや吉田さんと交流し片付けをして、木育のワークショップを終了しました。

12月3日「美術ⅩⅤ~他人の大切なものを勝手に大切にする~」のワークショップを開催しました

深澤孝史ワークショップ「他人の大切なものを勝手に大切にする」

12月3日(月)に、美術家の深澤孝史をファシリテーターに迎え、美術分野のワークショップ「他人の大切なものを勝手に大切にする」を開催しました。

午前:10:20〜11:50
まず導入として、深澤さんの自己紹介。静岡との縁、これまで行った主なアートプロジェクト、そしてそのベースとなる考え方について分かりやすい説明がありました。次に、机を挟んで向かい合った参加者が二人一組のペアになり、それぞれの「昔大切にしていたもの、大切だったもの、無くなってしまった大切なもの」についてインタビューし合いました。
「大切だったもの」は、人でもいいし、場でもいいし、ものでもいいし、活動でもいいし、考え方も可であっても可とのこと。それはなぜ大切だったのか、またどうして大切にすることになったのかなどを互いに聞いて、メモをとってゆきました。

午後:12:45〜14:15
紙粘土で、ペアの相手となった人の「大切にしていたもの」を表すオブジェを作るワークからスタート。まず深澤さんが今回使用する紙粘土の特色について軽く説明。そして参加者の手によって、真っ白い柔らかな紙粘土が、風景に、ペットに、街並みに、ペルシャ絨毯に、数年に一度大雨の後出現する幻の池、、、などに向けて成形されてゆきます。深澤さんは、作業机の間をまわって適宜声かけ。また、統合失調症の人が通う施設でおこなった活動、『ハーモニーランド』について、スライドを使って紹介してくださいました。それは「他人の話を尊重する」という点で、このワークショップとつながっています。
約1時間ほど、オブジェ制作に没頭。その後、午前中に行ったインタビューを文章にまとめ、オブジェに添えて完成。机を展示台として、オブジェと文章を並置し、皆で鑑賞し合うことで振り返りの時間としました。

「自らが大切にしていたもの」をというテーマは珍しくありませんが、「他人の大切なもの」というテーマ設定がユニーク。他者の思いに寄り添いながら、自らの制作と絡ませて、できあがったオブジェは、他者と自身の間に成立しています。
「勝手に」と「大切にする」という言葉は、普通はつながりません。それらが結びつけられたところから発想する活動は、参加者には、新鮮な体験だったのではないでしょうか。誤解やズレを許容しながら、「相手の話」を尊重し、そこから生まれた造形と文章が醸し出す優しさに気づくことができました。

11月27日「福祉系・表現Ⅳ」のワークショップを開催しました

11月27日「福祉系・表現Ⅳ」のワークショップを開催しました。
ファシリテーターは、11月1日に行った「福祉系・表現Ⅲ」に続いて、京都造形芸術大学名誉教授の水野哲雄氏さんです。

今回も静岡大学教育学部附属特別支援学校と連携し、同校の校外活動として位置づけました。ワークショップで使う小石などの材料は、水野さんとサポート役の成実憲一さんが、前日のうちに準備してくださいました。
受講者(14名)の集合時刻は9時30分。皆で会場設営をした後、水野さんよりこのワークショップで大切にしたい3つの「チ」、「キモチ・カタチ・イノチ」について説明がありました。10:00頃に特別支援学校の生徒(18名)と先生(8名)が大学に到着。そして、参加者(受講者と生徒)が6つのグループに分かれ、ワークショップは始まりました。

導入:「小石とあそぶ;ならべる〜積む」
参加者は、小石(前日に洗浄済み)の山から、1人8個の石を選び席に戻ります。次に、折り紙が配布されました。折り紙は造形活動を展開する「場」とのこと。最初のワークは、「4つの石の上に、残りの4つを乗せられますか?」。シンプルな行為ですが、石が組み合わされることで面白い形が出現。次に、「3つの石の上に5つを・・・」、さらに、「2つの石の上に6つを・・・」。だんだん難しくなりますが、そのことも楽しそう。あちらこちらで歓声が上がります。ついに「1つの石の上に、残りの7つを・・・」。大人でも難しいのですが、何人かの生徒が達成。
展開1:小石に手足が生えたら
1人あたり3本の園芸用結束ワイヤーが配布されました。
「針金3本があります。それを小石に巻きつけ、手足を作って、立たせてみてください」、動物なら足が4本、昆虫なら6本。鳥なら2本。ということで、参加者は石を胴体に見立てて挑戦。上手く立つと、小石が生き物に見えてくるから不思議です。
展開2:伸張するアルミ線
「アルミ線で遊びます」ということで、参加者には太さ0.9mm、長さ1mのアルミ線が配られました。
水野さんは皆の前でアルミ線をボール状に丸め、「これは種」と説明。そして針金の端をつまんで、それを植物の「芽」に見立て、ぐんぐん成長してゆくように伸ばしてゆきました。次に参加者が試行。「どこまで高く伸びるかやってみましょう」ということで、皆は、アルミ線にキモチを通わせます。
展開3:バランスと増殖するカタチ
3本のU字形の結束線で、人のカタチを作るワーク。まずは、水野さん自ら実演。1本目で頭と胴体が作られ、2本目は腕、3本目は足に。また、関節を作ってゆくことで、動きのある人のカタチになりました。次いで参加者が、それぞれの「人のカタチ」を作り始めました。最後に、バランスに気をつけ「人」を立たせます。いろいろなポーズの「人」ができあがりました。
U字形の結束線を次々と結びつける立体造形、「増殖するカタチ」をやって見せてくださいました。みるみるうちに、不思議なボリュームのあるカタチが現れてきました。
まとめ:グループごとに話し合いを行い、最後に、教室の後ろに集まって、水野さんを中心に中学部の生徒と本事業の受講者が集まって記念撮影をし、ワークショップは終了。

午後は会場を教室に移して、受講者による「振り返り」を行いました。
まず水野さんから、今日のワークショップで見られた生徒の現れについて感想をいただき、成実さんからも感想と水野さんとの関わりについて紹介いただきました。
次いで、活動の記録写真をプロジェクターで投影しながら、水野さんからそれぞれのワークについて解説をいただきました。「小石を積む・並べるとは、造形性が表れる原初の行為」、「生徒と受講者が同じ目線で関われた」、「場・空間・物と物の関係、見えないものを感じる」などの言葉が印象的でした。
質疑応答では、多くの質問に丁寧に答えてくださいました。大切なこととして、「参加者には、できるだけリラックスしてもらうようにしている」、「ワークショップの基本はライブということ、相手がどう反応するかわからない。そのことを大切にしている」等々。
事前に準備した木の枝などの材料は、時間の関係で使うことはできませんでしたが、身近にある様々な物が、豊かな造形活動を導く材料となることも共有できたのではないでしょうか。
特別支援学校の中学部生徒と一緒に、大人も子どもも造形活動の根源的な楽しさに触れる貴重な時間を過ごすことができました。